第0回:髙崎順子よりご挨拶(このニュースレターでやりたいこと)

第1回配信に先立つご挨拶文です。本編は10月10日より始まります。
髙崎順子
2020.10.07
誰でも

 こんにちは!ライターの髙崎順子です。

 この度は拙ニュースレターをお読み下さりありがとうございます。

 初回のレターは本編を始める前のご挨拶、0回としてお届けします。

 まず軽く自己紹介をしますと、私は46歳のフリーライターです。25歳まで日本に住み、フランスへ移住して20年が経ちました。ライターとして仕事を始めたのも、ちょうど20年前です。以来文章による発信は、外部メディアへの寄稿・単行本著作・Twitterでの呟き、の三つで行ってきました。

 その私がなぜ今、この個人ニュースレターを始めようと思ったのか。背景には、私がライターとして仕事をしてきたこの20年の、文字メディアの大きな変化があります。

 本編を始める前にそれについてお話ししつつ、このレターを通して読者の皆さんにお届けしたいこと、ご一緒にやってみたいことなど、お伝えできればと思います。

 少し長くなりますが、よろしかったらお付き合いください。

                  ***

 私がライターとして仕事をして、今年で20年と書きました。そしてこの20年はそのまま、文字メディアの激変期でもありました。

 私が仕事を始めた2000年代初頭は、ネットメディアが今ほど普及していなかった頃。不特定多数に文章を発信する手段はまだ、新聞・雑誌・書籍などの紙のマスメディアが主流でした。

 決まったページ数の限られた紙面に載るのは、出版社・新聞社が選んだ書き手の文章だけ。私自身その書き手の一人になりたくて、広告記事の数行のテキストや星占いのリライトなど、幅広い分野でがむしゃらに経験を積んでいました。読者と書き手の距離は遠く、投稿欄や愛読者ハガキなどはあるものの、両者の間には明確な一線が引かれていた時代です。双方が直接意見を交わす機会も、非常に少なかったように記憶しています。

 その後スマホやタブレットなど持ち歩けるネット環境が普及するに従い、ブログやネットニュース、投稿サイト、電子書籍といった「画面で文章を読む」手段が急速に増えていきました。ネットの読書環境は紙よりも物理的な制約が少なく、文章を載せられるスペースが圧倒的に多いので、当然といえば当然の流れです。そうして発表の場が増えれば増えるほど、かつてのように、書き手の数を限定する必要はなくなります。書きたい人が、誰の選別も受けずに、文章を発信できる。そのためのプラットフォームが多種多様に展開され、こちらのtheLetterさんのようなサービスが、たえず生まれています。

 読者の方にも、それらの千差万別の文章を自分の好みで選んで読みに行く行動が、現在ではすっかり定着しました。世間的には無名だけれど、あっと驚くような未知の才能に出会えたりもします。私自身、noteやはてなブログやpixivで、見知らぬ誰かの文章に触れるのを、とても楽しんでいる一人です。書き手と読者の距離は、以前とは比較にならないほど近くなりました。

 そんなネット以前/以降の文字メディアの変化の中でも、最大級のものはなんでしょう?

 私はそれを「読者側のアクションが視覚化され、影響力を持ったこと」だと、考えています。

 「読める場」の選択肢が激増した今、文章業界はかなりの読み手市場です。大手メディアが書き手や主題を選ぶ際には、「多く読まれるかどうか」の基準が、これまで以上に重視されています。地味だったり複雑だったり難解だったり、重要だけれど読まれにくいテーマはなかなか取り上げられない。もしくは取り上げるまでのハードルが、年々高くなっているように思えます。

 マスメディアである以上、社会に有益な情報を広く届けるために、多くの人々に読まれることはとても大切です。私自身、子育て環境改善に関する情報などは、一人でも多くの方に伝えることを願って、マスメディアに寄稿させていただいています。その一方、「一人でも多く」の手段が目的化することで、マスの舞台から情報の多様性が失われる恐れもまた、うっすらと感じている現状です。

 みなさんはどうでしょう。一つの話題がバズると、それに関する記事があらゆるメディアを染め上げる現象を、ご覧になってはいないでしょうか。他にも語るべきこと・見るべきものはたくさんあり、皆が皆、同じ一つの話題を取り上げる必要はないはずなのに。より掘り下げた、視界を深めた追跡記事や続報が必要な話題でも、次の「バズり」に流されて消えてしまう……というループを、繰り返していないでしょうか。

 加えてネットでは「読まれてナンボ」どころか、まずクリックされなければ始まらない、との厳しい現実があります。その主題に格別興味のない、過去には「ターゲット外」とされた読者層でも、引き付けられれば結果オーライ。読者の動きをデータ分析するウェブマーケティングが、ネットに載る文章の方向性に大きく影響を与えています。

 そうしてクリックの誘発を重要視した結果か、本文にそぐわないタイトルや見出しがつけられている記事例を、ここ数年少なからず見かけるようになりました。残念ながら私自身の仕事にも、思い当たる節があります。

 そんなウェブマーケティングで大きな意味を持つのが、読者の反応が如実に現れるSNSです。無料で手軽なこの意思表示ツールを通して、公表された文章に対する読者の反応が、ネット以前とは比較にならない速さと分量と生々しさで、書き手や媒体に届くようになりました。

 応援や前向きな批判がより手軽に寄せられ、製作側を励まし力を与える一方、無責任な中傷や脊髄反射的な誹謗が何のフィルターも介さずに拡散し、書き手の心身を痛めつける事態も頻発しています。私もTwitterのヘビーユーザーとして、その両方の動きに参画している自覚があります。

 書き手としては明らかにタフな状況ですが、読み手としても、これはなかなかハードです。SNSで多く反応を集めた文章があれば、つい覗いてしまう。覗こうとする以前に、タイトルだけでも目に入ってしまう。そしてそれは必ずしも、読みたいと望んでもいないテーマや内容であったりもする。自主的に見たいものを選べるはずのネットの世界だけに、「見たくないものを見せられた」との被害感情を、覚えやすくなっているのではないでしょうか。

 ここ数年、私はプロのライターとして、また活字中毒の一読者として、上のような変化とその功罪に向き合ってきました。無限に思える文章に手が届くことは嬉しい。書き手と読者の距離が近いのは喜ばしい。でもその反面、危惧すべきことが起こっている……。

 どうすればいいんだろう。

 文章業界で生かしてもらった一人として、私にできることはあるだろうか。

 そして少しずつ、既存メディアでもSNSでもない別の形でも、文章を送受信してみたいと考えるようになりました。

 「多く読まれる」の基準を外して、自分が重要と感じたことを調べ、考え、書きたい。

 そうしてまとめた文字情報を、自ら「読みたい」「欲しい」と願った人届けたい。

 選んでくれた読者と意見交換をしながら、互いの視野を広げ視界を深め合いたい。

 その交換作業から、日本語のネット環境に、前向きな言葉を少しずつでも増やせたら。

 それらの言葉を目にした方々と、時に一緒に時に別々に、社会の生きづらさや苦しさを、1ミリずつでもマシにしていけたら。

 そんな風に膨らんでいった願望と試行錯誤にご縁が重なり、始めたのが、このニュースレターです。読者のコメントを受け付けられるという、ニュースレターでありながら双方向のやりとりができる仕様に惹かれ、theLetterさんを選びました。

 前置きが長くなりましたが(というか、ほぼ前置きで終わりそうです!笑)、上記のように強く願って始めたものと、ご理解いただけましたら嬉しいです。

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 このニュースレターで扱うテーマは、これまでの私の活動の延長線上で、子育て環境・家族政策・パートナーシップ・社会保障・ジェンダーが中心となります。日本社会の生きづらさを少しでも減らすために、ネタやヒントとして使えそうなもの、が選択基準です。私の暮らすフランス社会の諸々の中から、母国・日本の役に立ちそうな題材をピックアップします。参照するファクトやデータ類は、フランス、日本をはじめ各国政府や公共機関の公式資料を用い、その都度リンクを貼ります。フランスを鏡にして日本を写すから見えてくる、発想の転換ポイントを一緒に考えていきましょう。

 内容は「マスメディアには寄稿しないもの」を基準と考えています。私の軸足はやはりマスメディアにありますし、ニュースレターにはそれとはまた、別の役割を与えたい(そうでなければやる意味がないとも思っています)。具体的には、既出の寄稿記事の補足、そこで書きそびれてしまったこと、配信後のアップデート、記事の準備段階で得た情報、コラム的な主観記事も少し……と心算をしたものの、せっかくの個人ニュースレターです。気負って「これ」と決め込まず、ゆるやかな変化は許しつつ、積み上げていきたいと考えています。

 配信は基本的に10日・20日・30日の月3回、状況と気力体力で増えることもアリ。無料記事と有料記事を織り交ぜつつ、とりあえずの継続目標は1年です。初回は2020年10月10日にお届けします。

 言葉は世界にますます溢れ、より自由自在に、双方向・多方向に、私たちの周囲を飛び交っています。ならばできるだけ自分に合うものを、自ら選んで、取り込んでいった方がいい。食が私たちの体を作るように、言葉は心を養うものなのですから。

 その選択肢の一つに、私のニュースレターがなれたら幸甚です。

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 一文でも、一言でも、読者の方からのコメントはいつでも大歓迎でお待ちしています。

 それでは、よろしくお願い致します!

 髙崎順子

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